この記事はプロモーションが含まれています
山の危険を乗り越える!登山者の命を守るための究極ガイド

登山では、知らなければ命を落とすということがたくさんある。
ここでは、私の長い登山歴で得た命を守るためのポイントを惜しみなく書いた。これらのことは、何百回も登山をしている人間にしかわかりえないことである。
この記事を読めば、命が助かる登山者がたくさんいるはず。初心者や登山者として成長したい人は、ぜひ参考にして欲しい。
はじめに
この記事は非常に長くなっている。
1度では読み切れないかもしれない。が、繰り返し何度も見て欲しい。1度見た程度では、全てを覚えられない。反復することで記憶に定着する。
これらを全て覚えることができれば、死ぬことはそうそうないだろう。私はこうやって山の世界を生きてきた。
偶然ではない。全て知識と経験によるものだ。実力でこの世界で生き残っている。そして、これらを知らない登山者は多いだろう。ネット検索した程度では得られない本物の知識をここに書いた。
無知なことは恥ではない。学べば良い。しかし、山では学ぶ前に死んでしまう人がたくさんいる。この記事を読めば、死ぬ前に学ぶことができる。ぜひ役に立てて欲しい。
なお、思いついた時点でドンドン加筆しているので、たまに読み直しに来てほしい。きっと役に立つ情報が追加されているはずだ。
登山に関すること
登山では、知らないと命を落とすようなことがたくさんある。
この項では、そのすべてを伝えたいと思う。
赤テープ
登山道の印、とおもってはいけない。
登山道の印"かも"とおもっておくのが大事。林業のひとが遭難対策に独自につける場合があるため、赤テープ=登山道だとはおもってはいけない。補助的に考えておくこと。
また、悪意のある人間が、わざと違う場所に赤テープをつけていたとしたら?
それを見破る術はない。見ず知らずの人間に運命を委ねてはダメだ。
道迷い
道に迷ったなと思ったら即引き返すこと。
判断は早ければ早いほど良い。初心者がやりがちだが、「なんとなく」で進むのは絶対ダメ。「踏み跡がある」、「赤テープがある」など、必ず根拠を複数重ねること。
経験豊富な私でも、道を逸れればあっという間に遭難する。山では人間の感覚は通じにくいのだ。山では登山道だけが頼りになる。登山道を一歩でも外れれば、それは遭難だ。
だからこそ、絶対に登山道を外れてはいけないと肝に銘じておくこと。また、道迷いなんてGPSがあるだけでほとんど解決するのだから、必ず持っていくこと。
登るか下るか
ちなみに、遭難したら「登るか下るか」という議論を目にしたことがあるひとも多いと思う。
が、道に迷ったらもうその段階で既に手遅れなのだ。経験上、一度見失った登山道を再び見つけるのは非常に困難であることを伝えておく。
それでもあえて言うなら、上を目指そう。道迷いは大抵下りで起こる。であれば、のぼり返すほうが自然だし、視界も開ける。また、確実ではないが、登山道は尾根や稜線にあることが多い。
しかし、先ほども言ったように、一度見失った登山道を再び見つけるのはそう簡単なことではない。
街から遠くの山の尾根や稜線を見て欲しい。そこにははっきりと登山道があるはずなのに、下からではまるで認識することができない。近くに行き「見下ろすこと」ではっきりと登山道があると認識できる。
見上げているだけでは、登山道は認識しづらいのだ。道を見つけるには、見下ろす必要がある。であれば、登り返してから見下ろす方が登山道が見つかりやすい。
遭難の研究
行き慣れている山で、誰かが作ったバリエーションルートに行ったことがある。
そこで道をそれてしまい、完全に見失ったことがある。戻ればすぐに正規ルートに復帰できるし、行き慣れている山で地理も完全に把握している。駐車場も道路もすぐ近くにある状況。
なので、このまま元の道を探して復帰してみようと実験してみた。「遭難からの復帰」という名目で。
結果的には、すぐ隣の尾根っぽいところに道があったのだが、ほんの数メートル離れていただけだった。しかし、その場所を下から見上げた状態では、登山道があるなんてまるでわからなかった。
「すぐ近くにあっても認識できない」
道迷いの恐ろしさはこの一点にあると思う。人間は、見上げた状態では道を認識できないのである。
体力こそ一番の遭難対策
個人的に一番の遭難対策は、体力だと思っている。
道に迷ったとき、疲れているときに登り返すには体力が必要。人間の思考はラクな方に流れる。多くの人間は下りたがるだろう。そこには正常性バイアスがかかっている。
コンパスと豊富な体力があれば、100%遭難はしないといっても過言ではない。極端な話になるが、「一方向に100km進む体力」があるなら、遭難することはまずないだろう。
登山において"体力"は、生死を左右するほど影響力のある大事な要素である。しっかりと鍛えよう。
不自然な倒木
登山道には、ときどき分岐がある。
そこで片方が、枝や小さい木で不自然にふさがれていることがある。これは誰かが「こっちは間違いだよ」と教えてくれているサイン。
あきらかに人工的な配置であればそれはサインなので、その方向に行くのはヤメよう。ただし、本当に自然の倒木なこともあるので、よく観察しよう。
選択肢は常に二択であり、どちらの可能性も考慮して行動すること。
地形の把握
登る山の場所や、街の方角を覚えておこう。
道に迷ったとき、周りに何があるのかがわかっているだけでも、助かる確率は変わってくる。助かりたければ、街のほうに進むべきであり、それは事前に地図を見ておかないとわからない。
グーグルマップでいいから、どっちに何があるのかはざっくりと頭に入れておこう。また、方角を知るにはコンパスが必要なので、必ず用意しておくこと。
踏み跡(トレース)
登山に慣れてくると、人間の踏み跡がわかるようになってくる。
これが出来るようになると、道迷いはしなくなる。「登山道っぽいけど、踏み跡がないから違うな」というような判断ができるようになる。
ただし、迷いやすいような場所は、間違いのトレースが多くなる。間違った方向に人が何人も行ってしまうと、それが道になってしまうのだ。
先ほども言ったが、大事なのは根拠を重ねること。踏み跡だけではなく、赤テープや他にルートがある可能性などは、常に把握しておこう。
夏道
夏道でトレースが活躍するのは、登山道が不明瞭なとき。
不明瞭な登山道では、踏み跡を辿ることで正解がわかる。夏山ではあまり使うことはないが、踏み跡は登山者の少ない山域では重要な情報源のひとつ。
夏山の踏み跡は見分けるのが難しいので、たくさん経験をして、目を凝らせておこう。
雪道
雪山のトレースは、信用してはいけない。
厳密に言うと、信用してはいけないトレースが多々ある。人が何度も通っているようなはっきりとしたトレースは大丈夫だが、一人か二人程度のトレースは地雷が多い。
なぜなら、雪山では登山道が見えなくなっており、経験豊富な人間でないとルートを見つけるのは困難だからだ。私もそうだが、雪山に初見で行くと登山道すらわからない。そういった人たちがつけたトレースは不確実なものが多く、これについていくと間違うことがある。
赤テープと同様、見ず知らずの他人に運命を委ねるべきではない。雪山をやるなら、自分一人で頂上まで行ける技術が必須。トレースに頼った登山は命を落としかねない。
また、雪山は風が強いとトレースが数分で消えることもある。GPSは必ず持っていこう。
岩場
岩場にも踏み跡がある。
わかりやすいのは、泥もしくは泥が渇いたあとの土。
これを見ると、登山者の足の置き場や体格などがわかる。どこに足を置けばいいのかに参考になるので、注意深く見てみよう。
他にも手の跡というのもあって、ひとがよく触る岩などはツルツルになっている。
鎖場

鎖場もトレースがわかりやすい場所。
人がよく通るところは岩の角が丸くなっていたり、土で汚れて白っぽくなっていたりする。これを見れば、のぼるべきルートが見えてくる。
特に鎖場は、のぼりながら考えているとその間に握力がなくなる場合があるため、あらかじめルートを考えておくほうが良い。
下りが核心
「登山は下りが核心」
今はもうないが、昔たまたま見つけた古いホームページに書かれていたこの言葉は、今でも私を守ってくれている。核心とは、物事の中心となる大切な部分のこと。
転倒や道迷いは、下山のほうが圧倒的に多いということをしっかりと認識しておこう。そのため、私は頂上でゆっくりと食事や休憩をすることはほぼない。最後まで気を緩めたくないからだ。
頂上に着いた後は、更に気を引き締めて登山を続けなければならない。登りよりも下る時の方が大事なのだ。このことは絶対に頭に入れておくこと。
名も知らない登山の先人に教わったこの言葉を、今こそ後輩登山者に還元したいと思う。
登山は下りが核心である。
登山中は、この言葉を頭の中で繰り返し欲しい。疲れて注意力散漫になったときなど、自らを守ってくれる魔法の言葉だ。
最悪の死
死をイメージして登山をしている人は少ない。
- 滑落して死ぬ
- 道に迷って衰弱して死ぬ
- ヘビやハチに襲われて死ぬ
- 熊に襲われて死ぬ
登山の死はだいたいこんなところだろう。しかし、即死できるケースはおそらく稀だ。
つまり、苦しみながら死ぬ可能性が高いのである。死ぬ間際に、現実では味わったことのないような、とてもつらい経験をして死ぬ可能性がある。
「滑落したら人間の体はどうなるか」「熊に襲われた体はどうなるのか」などを知っている人は意外と少ない。滑落すれば手足がちぎれたり、骨が体を突き破ったり、熊に襲われれば生きたまま自分が喰われることだってあるかもしれないのである。
これらは決して想像ではない。現実に起こりうる出来事で、山ではしょっちゅう起きていることだ。ニュースではそんな映像は流さない。だから、登山者は漠然としか死をイメージできないのだ。
最悪の死をイメージすると、自然と避けたいと思うようになる。たとえば、「滑落して自分の手足や内臓が飛び散る光景」や「熊に食べられながら死んでいく自分の姿」を想像してみてほしい。どうだろう?嫌ではないだろうか。
「そんなのは絶対嫌だ」「そうなりたくない」と思えば、人間は自然と行動をする。具体的に自分の死をイメージすることが、生存率アップに繋がるのである。
山で生き残りたければ、ぜひ最悪の死をイメージして欲しい。想定し得る最悪の出来事をイメージできる人間は、山では長生きする。
単独行
ひとりで登山することを「単独行」とか「ソロ(登山)」という。
登山者としてレベルアップしたければ、単独行は必ず通っておくべき道である。
私は多くのグループ登山者を見てきたが、複数人でのぼる登山者は弱い人が多い。誰かに守られた登山をしている。
私は年間のほぼすべてが単独行であるが、まれに友人を連れていくことがある。誰かとのぼる山は楽しい。しかし、単独行とは全く違う世界だ。
グループ登山はまるで観光やピクニックのようである。不安やぴりつきがない。ケガをしても助けてもらえるし、熊に対しても複数人で戦える。そんな心の余裕がある。
本質は変わらない
しかし、山の危険性は一人だろうが複数人だろうが、本質的には変わっていない。
何人でのぼろうが、崖から落ちれば死ぬし、雪崩に巻き込まれればまとめて死ぬことだってある。複数人でのぼれば安全性がアップするのは間違いないが、それでも結局は死を避けることはできない。
上述したが、登山では「自分の死」や「最悪の死」を意識することはとても重要である。しかし、グループ登山では「死」への意識が薄らいでしまう。気の緩みが必ずでる。
いつも他人としかのぼらない人は、この辺に大きな問題を抱えていると思う。
ソロ登山は「死」の感覚が近い。いつも近くにいる。全ての責任は自分にあり、全ての問題は自分で解決する必要がある。しかしそれは、登山でのレベルアップには欠かせないものと思う。
最初は行き慣れた簡単な山で良いので、単独登山もぜひやってみて欲しい。
自分がレベルアップしたうえで他人とのぼれるのなら、グループレベルの底上げになるし、もしかしたら誰かを救うことが出来るかもしれない。
優れた登山者
優れた登山者になって欲しい。
以前、大尽山で年配の登山者と話したことがある。たった数分の会話だったが、そのひとはまるで登山者の鏡のような人だった。
- 73歳だと言っていたが、とても体力があり、余裕そうだった
- この地域の熊の生息数や、被害の件数などを把握していた
- 熊に対する装備や武器をしっかりと持っていた
- 熊に攻撃されたとき「鼻を狙うと良い」と言っていた
- 午後の天気が崩れることを知っていた
言い換えれば以下のようになる。
- 年齢を言い訳にせずトレーニングをしている
- 危険に対する意識が高い
- 最悪の死を想定している
これらは一朝一夕で身につくようなものではない。長い間の登山経験で体に染みついていったのだろうと思う。
話をしていてとても素晴らしい登山者だと思った。みんなこんな登山者を目指して欲しい。
私は今ではこれらのことを当たり前のようにできるし、している。しかし、実際にそんな人間にあってみると、これらが出来ている人はごく一部なのだと気付かされた。
無知は恥ではないが、登山で問題なのは「経験を積む前に死んでしまう」ことがあるということ。だからこそ、この記事は多くの人に読んで欲しいと願っている。
優れた登山者とは、生きるために当たり前のことを当たり前にできるようになること。決して難しいことではない。
クマ
クマを怖がる登山者は多いだろう。
私は何百回も山にはのぼっているが、未だに遭遇したことがない。痕跡は何回もあるのだが。そのうえで、それでも知っておいて欲しい知識や意識などを書く。
熊に対しては登山を始めた頃からずっと勉強や研究をしているので、役に立つと思う。ぜひ参考にして欲しい。
熊は2種類
日本には熊は2種類いる。ツキノワグマとヒグマだ。
九州は絶滅している。四国は絶滅した"かも"と言われているが、近年は目撃情報がチラホラある。ヒグマは北海道にしかいない。
なので、気を付けるべきは本州のツキノワグマと北海道のヒグマということだ。
襲われる可能性
まずはじめに、熊は必ず襲ってくる生き物ではないということを認識して欲しい。
TVやニュースの影響で、「熊=肉食」だと勘違いしている人もいるかもしれないが、熊は雑食だ。雑食というのは、何でも食べるということ。木の実やタケノコ、葉っぱや肉なども食べる。
ここで少し考えて欲しいのだが、その辺に落ちているドングリやタケノコを食べるのと、人間を襲って食べるのとでは、どちらがラクだろうか。おそらくは前者だろう。
必要性がなければわざわざ人間を襲う理由がない。雑食なのだから。そもそも「狩り」とは、自分の命をリスクにさらす行為でもある。
これらを考えれば、基本的に熊が攻撃してこないだろうということは容易に想像できるだろう。
対策
熊に対しては人間が恐れすぎていて、ネット上には様々な意見や憶測などが飛び交っている。
人それぞれ意見があると思うが、私は以下の2つは必ずやっている。
- 熊鈴をつける
- 熊スプレーを身に着ける
この2つは絶対にやって欲しい。私が山にいる時間(数千時間は超える)を考えたら、今までで熊が近くにいなかったということはまずありえない。つまり、熊鈴の効果があったとみて間違いないと思う。
熊スプレーの効果は、相手が動物である限り間違いなくある。ただし、正しく使わないと自爆する可能性もあるので注意が必要だ。

襲われるパターン
熊に襲われるのは、だいたい以下のパターン。
- 子熊を守るため
- 獲物を奪われると判断したとき
- 不用意な接敵
特に多いのが自分の子供を守るために襲ってくるパターン。これが一番定番だと思う。
ただし、これらの大半は熊鈴だけでも防げるはず。熊鈴は万能ではないが、少なくとも熊にこちらの存在を知ってもらうという点では、間違いなく有効である。

熊鈴はぶら下げているだけではなく、きちんと音を出すようにしよう。視界が悪いところでは、ストックや手を叩いてさらに音を出そう。
スズメバチ
登山でもっとも注意すべき生き物。食物連鎖の頂点。人間は勝てない。
活動時期は春~秋くらい。もっと細かく言うと、梅雨明けから10月くらいまでが危ない。特に、梅雨が明けて夏がはじまるとバンバン飛び始める。梅雨明けは特に危険な時期。
その年の梅雨がどれだけ雨が降ったかでも大きく変わる。梅雨が長引いた年はスズメバチが少ない。逆に、空梅雨だと大量に飛んでいる。
登山といえば夏のイメージが強いだろうが、特に7~9月は登る山のエリアを絞るべき。低山や人気のない山は避けるほうが無難。この時期は、私がもっとも登山活動を縮小する期間で、特定の安全(であろう)山しかのぼらない。
スズメバチの巣の場所は毎年ランダムに変わるので、絶対に安全な場所というものはない。また、スズメバチに対する安全策というものは、ほとんど存在しない。
活動エリアを縮小することが一番のリスクヘッジになる。
遭遇したら
身体の周りをスズメバチがグルグル回ることがある。
これは巣に近づいている証拠であり、こちらが危険かどうかを判断している状態。こうなると刺される一歩手前。走って逃げることをおすすめする。
「スズメバチにあったら、しゃがんでその場でジッとしていろ」という説もある。が、私は信用していない。
スズメバチには活動エリアがあるため、その範囲から外れれば驚くほど追ってこない。驚くほどエリアに忠実なのである。また、スズメバチは高低差に弱いようで、階段などの一気に上下するような場所では、すぐに追ってこなくなることが多々ある。ハチの活動エリアは、上下範囲は狭いのかもしれない。
私の経験上、できる限り早くエリア外に逃げることが最善策だと考えている。ただし、走って逃げた先に巣があった場合、敵地に突っ込む形になるので100%の保証はできない。来た道を走りながら戻れば、一番安全なように思う。登頂は無理だが。
ヘビ
ヘビには賢さがある。
自分が勝てない相手に対しては、すぐさま逃げるという賢い選択をする。アニメや映画の世界では、人間を襲ってくる描写がたくさんあるので勘違いしがちだが、ヘビは人間を積極的に襲ってきたりはしない。
今まで何度も遭遇しているが、その全てが逃げている。ヘビは、逃げるという判断ができる賢い生き物だ。
ヘビに対しては、踏まないようにだけ気を付けていれば良い。生き物なのでイレギュラーはあるだろうが、こちらが危害を加えなければ、攻撃してきたりはしない。
本州の毒蛇は二種類だけ。マムシとヤマカガシくらいは見分けられるようにしておこう。

ヤマビル
害はないが、厄介な生き物。
ミミズみたいな容姿で、人間の血を吸う。異様に反応が早く、気付いたら吸われていることもしばしば。吸われている絵面はとてもグロい。グロすぎる。
活動時期は、梅雨明け~秋くらいまで。特定の山域しかいないが、有名なのは丹沢とか。群馬で言ったら、西上州エリアは物凄くいる。
過去に西上州の大桁山というところで、ルートを間違って進んでしまったことがある。このとき、ヤマビルに数十匹囲まれてトラウマになった。それ以来、私はヤマビルのいるエリアは冬の時期しか行かないことにしている。
ヤマビルに対する研究は進んでおり、「〇〇県 ヤマビル」などと検索すれば、自治体が公表している分布図が見られる。参考にすると良い。
雷
山の雷は恐ろしい。
街で味わう雷とは全く違う。特に音が違う。すぐ隣で雷のゴロゴロ音が聞こえると、すごく焦る。
落雷があると木の下に避難したがる人がいるかもしれないが、これは危険だ。人間の心理的に屋根があると安全と思ってしまうのかもしれないが、万が一木に落ちた場合、電流が地面を伝う可能性がある。
木からはできるだけ離れたほうが安全だ。覚えておこう。
熱中症
熱中症は水分だけ摂っていてもダメ。
しっかりと水分補給していても、塩分を摂らないといとも簡単になってしまう。25度くらいの日光白根山でモロに熱中症になった。頭痛がした。
気温自体も大事だが、「頭にどれだけ日光が当たっているか」は大きく関係がありそう。朝食+お茶だけでは防ぎきれなかった。夏は糖質だけではなく、塩分のある食べ物も持っていこう。
夏至と冬至
登山をやるなら、夏至(げし)と冬至(とうじ)は覚えよう。
夏至は6月22日、冬至は12月22日。夏至は1年で1番日が長く、冬至はその反対。つまり、もっとも日が落ちるのが早いのは、12月22日ということ。5時には暗くなる。
夏至と冬至は半年周期なので覚えやすい。どっちかを覚えておけば、半年ズラすだけ。ちゃんと覚えておこう。
慣れると太陽と地平線との距離だけで、日没までどのくらいかかるかわかるようにもなってくる。
ヘッドライト
ヘッドライトは必ず持っていこう。
登山に必要なもののひとつに「ヘッドライト」を挙げられない人は素人。山では、暗くなると全く行動が出来なくなる。目が慣れることはない。
もし、グループ登山をしようとしていて、「ヘッドライトなんていらないよ」という人がいたらその人は地雷。登山の経験が浅く、危機管理能力も低い。
ヘッドライトは絶対に持っていこう。
雪山
雪山は、頂上を目的として登山をするべきではない。
トレースや雪の量で、難易度は大きく変わる。撤退する可能性は、夏山以上に考えておくべき。頂上を目的とすると、状況によっては難易度が跳ね上がるため、無理をしてはいけない。
少なくとも、トレースが全くない雪山で、個人で頂上を目指すのは無謀。雪の量にもよるが。
過去に胸が埋まるくらいの雪の量で、夏山なら10分で行けるところをラッセルして2時間かかったことがある。無論、身体はガタガタになった。
雪目
スキーやスノボをやるひとは知っていると思うが、目も日焼けする。
これを雪目という。雪山は特にサングラスが必須。悪化すると緑内障などになる可能性もあるため、皮膚と同じように目の保護も考えておく必要がある。
当然肌も日焼けするので、日焼け止めクリームは塗っておこう。
アイゼン

アイゼンを使うべき状況の見極めは、実はすごく難しい。
「アイゼンは雪山で使うもの」ではあるが、「最初から最後まで使う」というのは、少し違う。何でもかんでも12本爪アイゼンというのは間違いで、人によって使う使わないの判断が大きく変わる。
以前、四阿山にのぼったときにすれ違った人が、「このルートの状況じゃ、俺はアイゼンいらないと思うんだけどな~」と言っていた。試しに、アイゼンなしでどこまで行けるかやってみたが、結局最後まで使うことはなかった。私もアイゼンは必要ないと思った。が、周りの登山者は最初から最後まで12本爪アイゼンを使っていた。
初心者には特に、12本爪アイゼンのデメリットのほうを見て欲しいと思う。
脚力のない人間が使うアイゼンは、常に転倒の危険が付きまとう。「爪をズボンにひっかけて滑落」「自分の足を踏んで血だらけ」なんてのは、毎年起こっている定番の事故。
12本爪アイゼンは、まるで鉄下駄のような重さだ。初心者に鉄下駄をはめて登山をする脚力はない。12本爪アイゼンを使うなら、それに見合った脚力が必要であり、危険が常に付きまとうことは理解しておくべき。
そもそも12本爪アイゼンは、上級者向けの道具である。初心者がこれを付ければ、転倒はしないまでも、体力や判断力の低下による遭難だって十分にありえる。
私はほとんどの人は、チェーンアイゼンで十分だと思っている。軽さや取り回しの良さが抜群で、よほどの高難易度の山でなければ、技術次第でどこでものぼれる。大半のひとはこれで十分。しかし、世間一般ではあまりおすすめされていない。私はおすすめするが。
12本爪を否定しているわけではない。チェーンより12本爪が有効なケースはいくらだってある。しかし、その見極めができる人はごく少数だろう。
使う人次第で良くも悪くもなるのがアイゼン。アイゼンの使い方に正解はない。12本爪を使うならそれに見合った脚力を身に着けよう。
アイゼンなし
実は、雪山はアイゼンがなくてものぼれることがほとんど。
アイゼンを使わないのは、若者に見られる傾向。私は若者ではないが、登山をはじめた頃に「アイゼンを使わない=道具に頼らないでカッコイイ」みたいな考えになっていた。
どの雪山もアイゼンなしでのぼっていたが、ある時思いっきりスリップして、片ヒザを地面についてしまったことがある。その雪の下には岩があり、数週間とんでもないアザになってしまった。岩に向かって、全体重をかけたジャンピングニーをかましたのである。よく骨折しなかったなと思う。
それでも懲りずにノーアイゼンでのぼっていた。金峰山に向かう途中に凍ったところがあり、ここでも思いっきりスリップして、今度は左肩から氷の上に落ちた。すると、左肩が動かなくなってしまったのである。折れてはないけど感覚がない。動かない。トレッキングポールを使うことができなくなってしまった。
この時にようやく気付いた。アイゼンはのぼるためにあるものではなく、滑って事故らないためにあるものなのだと。2件とも思いっきり足を滑らせて身体が宙に浮いているのである。
だからこそ、アイゼンを使ってない人はケガをする前に使って欲しいと思う。めんどくさいのはわかる。しかし、私のこれらの経験は、骨折してもおかしくない状況だったことは付け加えておく。
面倒くさがりには、チェーンアイゼンをおすすめする。慣れれば5分で装着できるし、着脱は簡単。私はこれ以降チェーンアイゼンマンになった。面倒くささと機動性、安全などのバランスを考えるとこれに落ち着いた。
アイゼンなしでのぼれるような技術のある人なら、チェーンアイゼンだけでほとんどの山を登ることができる。実際、私は過去に9割の雪山をチェーンでのぼっている。
チェーンを否定する人は多く、対面でも非難されたことはある。が、道具はどこまでいっても使う人の力量次第である。
12本爪アイゼンを付けた70~80歳くらいの人に「ハッ、そんなんじゃダメだよ」と見下されたことがあった。吹けば倒れてしまいそうなこの老人と私、果たしてどちらが遭難しそうなのかは言うまでもないだろう。
視界
登山中に気を配るべき目線について書く。
- 周りの地形を見る
- 上を見る
- 足元を見る
周りを見るのは、地形を把握するため。といっても、難しい話ではない。落石や雪崩がありそうな場所か、熊がいるかどうか、見える範囲で把握しておく。
上を見るのは、熊やヘビの対策。木の上にいる場合があるため、上の視界も常に確認しておくこと。また、空を見て雲の位置なども確認する。雨雲や雷雨が来ていないかなどを見ておく。
基本は足元を見て歩く。歩幅を見れば自分のペースが把握できる。また、ヘビを踏まないために、足元は常に警戒しておく必要がある。
比率で言うと、「周り3:上1:足元6」くらい。登山中は視界を色んなところにやり、情報を更新し続けること。状況は常に変わるということを忘れてはいけない。自然の中では特に。
手を叩く
熊鈴がない、もしくはうるさくて嫌という人もいるだろう。
そこでおすすめなのが、手をパンパンと少し強めに叩くこと。意外と大きな音が出る。
常にやる必要はなく、死角が多い場所でやると良い。同じようにトレッキングポール同士で叩くのも有効。私はこれをよくやる。
熊鈴を付けていたとしても、視界が悪い場所では積極的に音を出そう。
沢
沢とは、小さな川のようなもの。
登山道にいきなり現れることがあり、知らないと疑問に思うパターンがいくつか出てくる。沢が出てきたときの対処法は以下の3つ。
- 沢を横切る
- 沢沿いに進む
- 沢の中を進む
だいたいこの3つのパターンが多い。登山道がはっきりしていれば、その方向に進めばよい。踏み跡もよく見ること。登山道が沢になっているパターンは、初心者はわからないと思う。
沢がでた場合、判断力が必要になる。しっかり考えよう。
火山性微動
火山をのぼるなら知っておきたい知識のひとつ。
噴火の前には地震が頻発する。つまり、予兆があるのである。
火山活動の状況などは気象庁のホームページに書かれているため、登山前は必ず確認しておくこと。
正常性バイアス
人間の心理現象のひとつ。
正常性バイアスとは、異常事態が起こったときに、安全だと勘違いしてしまうこと。具体的には、災害や事故などが起こった際に、避難せずにスマホなどで動画を撮影するような行為がこれに当たる。
危険な状況であれば、素直に逃げるべき。それができない人間はいずれ死ぬ。山では特に大事。
体力
思考力や判断力は、体力の上に成り立っている。
登山者は、体力のない人間ほど遭難しやすいということをしっかりと理解しておくべき。体力は登山においての基本であり、全ての要素に関わるものである。
トレーニング
トレーニングをしてない登山者から死ぬ。
登山とトレーニングは必ずセットで考えること。登山をしている限りは、トレーニングをし続けなければならない。それが出来ない人間から死んでいくのだから。
車関連
車関連のテクニックや知識などをここに書く。
マイカー登山者は、ぜひ参考にして欲しい。
トラックやバスは避ける
トラックやバスなど、大型車の前後からは離れよう。特に高速道路。
大型車は車重が重く、衝突されるとほぼ確実に死ぬ。道路においては絶対的な存在であり、極力近づいてはいけない。
軽自動車は安全性能が低いと言われているが、安全性能の高いベンツだろうが死ぬ。これは、素材や構造だけでは避けられない、物理衝突的な話。
気になる人はトラック事故を調べてみるといい。死にたくなければ、大型車の近くからは離れよう。
スタッドレスは必須
登山を一年中やりたいなら、スタッドレスタイヤは必ず用意すること。
たまに、雪山に行かないから大丈夫だと思っている人がいるが、スタッドレスタイヤは雪に強いわけではない。スリップ(滑り)に強いものである。
真冬は、雪の降らない時期でも路面は凍結している。里山(標高200m以下)を所持している知り合いが言っていたが、付近の路面は朝になると凍結しており、よく事故があるのだそう。
冬の時期は、日陰になっている場所は凍結しているおそれがあると予測しておくこと。登山や旅行が趣味の人は、必ずスタッドレスタイヤに履き替えよう。
タイヤの交換時期
スタッドレスタイヤに履き替えるべき時期を教える。
関東近郊であれば、だいたい12月~4月頃までが良い。山間部や雪国は、もっと早く付けることになると思う。
私は念のため、「12月~ゴールデンウィークが終わるまで」としている。
エンジンブレーキ
全然使ってない人が多くて驚く。
下り坂はエンジンブレーキを必ず使おう。エンジンブレーキとは、ギアを変えてスピードを遅くすること。シフトレバーのSとかBとかがそれにあたる。
Dより下にあるギアに入れることで、エンジンブレーキがかかり、フットブレーキの負担が減る。坂道をフットブレーキだけで下ると故障してしまい、ブレーキが効かなくなることがある。
詳しいことは「エンジンブレーキ」と検索してみて欲しい。下り坂では必須のテクニックなので、ATでもギアチェンジは必ずやろう。
わだちをずらす
雪道を車が走った跡を「わだち」という。
状況にもよるが、わだちを馬鹿正直にたどるとスリップすることがある。わだちは車輪が通ったあとなので、雪が溶けて凍っていることがよくある。
そこであえてわだちをそれて走ると、スリップしにくくなることがある。氷単体だと滑るが、氷の上に雪がのっていればそれが摩擦になり、滑りにくくなる。私はこれを「雪を噛む」と呼んでいる。
このテクニックは徒歩でも有効。雪を噛むようにして歩くことが出来れば、スリップはしにくくなる。
ライト点灯
山道に入ったら昼でもライトはつけよう。
運転の知識が深いであろうスポーツカーや、賢い人種であろう高級車を乗っている人達は、ライト点灯のタイミングが早い。山道や夕方にはほとんどつけており、彼らの賢さを象徴しているように思う。
燃費を気にする人もいるみたいだが、事故ったときの手間や労力が釣り合っているのかよく考えて欲しい。手間を考えればライトの燃費など気にならないはず。
早めにライト点灯しておくとわかるが、あきらかに相手の避ける反応が速くなる。光は色以上に、人間が目視しやすいのだ。
最近の車はデイライトや自動点灯で勝手につくが、まだまだ普及しきってない様子。トンネルもライト点灯必須なので、覚えておこう。
FF/FR
FFは前輪駆動、FRは後輪駆動。
チェーンを付ける場合、自分の車の駆動輪がどっちなのかを把握しておこう。今の車はだいたいFF。チェーンは駆動輪につけないと意味がない。四駆であればどちらでも良い。
バッテリーあがり
ジャンプスターターを使おう。
ワニ口で他人の車から電気をもらうという方法が一般的に知られているが、現代はジャンプスターターで簡単に付けることができる。
ジャンプスターターはモバイルバッテリーと同じ仕組みなので、スマホの充電として使えるものもある。ひとつ持っておくと、車にも登山にも役に立つ。
ちなみに、ハイブリッド車はバッテリー救援をしてはならない。壊れる。救援できるのはガソリン車の場合。
自分の命はひとつだけ
この記事では、命を守るポイントについていろいろと解説した。
このサイトの目的のひとつは、登山者のために有益な情報を発信すること。そのひとつとして、生きた情報を提供する必要があったが、集客を狙った記事だとなかなかこういうのは書けないので、今回機会が持てて良かった。読んでくれてありがとう。
登山のサイトで、車のことに言及しているのは結構珍しいかとおもう。みんな意外と書かないので。でも、命に関することを書くとなると、車のことはとても大事。
私は、登山で人が死にすぎていると感じている。しかし、登山では知らないと死に直結するようなことがたくさんあって、それらを全て知ることは困難だ。
TVやYoutubeでは、登山の良い面しか映し出さない。これは功罪ともいえるが、私は自分のサイトでは、登山は死の危険性があるということを、もっとたくさんの人にしっかりと認知させたいと思っている。
今回、それを文字にすることが多少なりともできたと思う。これを読めば、私の知識や技術や考え方を継承できるはず。そうすれば、遭難する可能性は少なくなるだろう。
役に立つと思ったら、知り合いに教えたりSNSでシェアしてもらえるとありがたい。この記事で救える命はたくさんあるはずだ。
これを読んだ人が、無事に生き残り、幸福な登山人生を送れることを祈る。